ワケありイジワル王子はツンデレ姫様を溺愛したい。

ずっと前から。

【亮side】


今日は文化祭。
俺の頭の中は、梨愛の事で埋め尽くされてい
た。
なぜなら。
俺が想っている相手、梨愛が、俺にメイドで接
客をしてくれるらしいからだ。
だから、さっさと自分のクラスでの仕事を終わ
らせ、休憩で梨愛のクラスに行こうと思ってい
た。
なのに。
クラスの1人がしくじって、客に迷惑をかけてし
まった。
そのため、梨愛の元へ行き始める時間が遅くな
ってしまった。
A組に着いた。
近くにいた梨愛では無いメイドが、俺に声をか
けてくる。
うるせえな、俺は梨愛に会いに来たんだ。
そう思い、梨愛を探すため教室の中を覗くと。
俺は、鈍器で殴られたような衝動に駆られた。
梨愛が、清美拓也といたから。
清美っていうと………学園の王子とか呼ばれて
るやつじゃねぇか?
梨愛も………その顔がいいのか?
俺じゃなくて、あいつの事が。
俺は、逃げるようにその場を立ち去っていた。
クソっ。
梨愛が、その清美拓也と笑っていた。
俺に向ける笑顔とはまた違う。
愛しそうにする、瞳。
忘れたいのに、その瞳が目に焼き付いて離れな
い。
俺は、気を紛らわすように文化祭を全力で手伝
い、終わったら委員会の仕事に向かった。
梨愛に会わないように。
花に水やりをしていると、会ってしまった。
梨愛と。
いつものように俺の名前を呼んでくれて。
でも、いつものような嬉しさは無かった。
どうせ、梨愛はあいつのことが好きなんだろ?
と、そんな気持ちが頭の中で確立しているか
ら。
梨愛に対して、素っ気ない態度を取ってし
まう。
終いには、言ってしまった。
「梨愛。俺、お前のことが好き。」
幼なじみの俺より、まだ付き合いの浅い清美を
好きになったんだな、と思いながら。
梨愛は、戸惑っている。
まあ、そりゃそうだよな。
梨愛は天然だからな。
俺は、今までアピールしてきたつもりだったけ
ど。
その気持ちは届いていなかったから。
伝えなきゃ、何も終わらないし、始まらない。
「梨愛、ごめん。急にこんな事言って。困るよ
な、幼なじみからこんな事言われても、迷惑だ
よな…………」
つい、本音を口にしてしまう。
もう、気持ちをはっきり伝えたから、タガが外
れてしまった。
「梨愛、俺は、梨愛に初めてあった………5歳の
時からずっと梨愛の事が好きだ。一目惚れ、だ
った。」
「あ………え………」
梨愛は言葉に困っている。
「大丈夫、無理に返そうとしなくていい。」
そう言うと、梨愛はこう言った。
「ありがとう。」
梨愛は優しい。
だから、困らせている俺が悪いのに、梨愛は自
分を責める。
ああ、どうしようもないほど愛おしい。
「梨愛は、恥ずかしがり屋だけど優しい。ドジっ
子だけど、自分より他人の事を優先して守ろう
とする。それに笑顔が可愛くて、俺にとっては
梨愛は太陽より眩しい存在。昔、引っ込み思案
だった俺にも気をかけてくれて………他の子と
同じように接してくれて。そんな梨愛が、俺は
好き。」
「っ………でも、梨愛………」
「やめてくれ。分かってる、梨愛は清美の事が好
きだってことは。」
「え?」
思った通りの返答じゃなく、俺は違和感を覚え
る。
「違うのか?」
「…………分からない。」
分からない………か。
梨愛は、多分自分の気持ちに気づいていないだ
けで、清美の事を想っている。
それを知ったからといって、嫉妬したからとい
って、俺は諦めるつもりはサラサラないが。
梨愛が笑ってくれて、幸せになれるのが清美と
の人生なら、応援したい。でも、いざとなって
俺は応援できるのか………?
もし、出来なかったとしても出来たとしても、
今は。
「梨愛、俺は梨愛の事が好きだ、多分、今までも
これからもずっと。」
「………うん。」
「でも、もし梨愛に好きな奴が出来たら、その時
は、俺が1番応援してやるから。覚悟しとけ
よ。」
「うんっ!!」
梨愛は、気まずいはずなのにいつもと同じ様
に………いや、いつも以上に可愛らしく笑いか
けてくれる。
そして、梨愛のこの一言で、俺は心が軽くなっ
た。
「亮、告白してくれて、ありがとうっ」
「っ…………!!」
告白する事で、今までの関係が崩れてしまうの
ではないかと、どこか怖気付いている自分がい
ることは分かっていた。
でも梨愛は、毎回新しい笑顔を見せてくれる。
ああ、告白してよかったと。
そう思えて、余計に愛おしくなってしまう。
俺、重症だな。
「梨愛、これからも会って話してくれるか?」
その問いかけに梨愛はニコッと笑って。
「もちろん!」
多分、俺は梨愛以外の異性を好きになる事は無
いだろう。
でもだからこそ、梨愛を幸せに出来ると思う。
俺はまだ、諦めない。
「梨愛、俺まだ諦めてないから。これから覚悟し
とけよ?」
そう言って、悪い笑みを浮かべて見せた。
「もう!亮の意地悪!!」
そんな梨愛の様子を、俺はビターな思いをしな
がら見ていた。
< 12 / 28 >

この作品をシェア

pagetop