ワケありイジワル王子はツンデレ姫様を溺愛したい。
【拓也side】


「タタ!?まだ30分前だよ?」
そう言って僕の前に現れた彼女。
あまりの可愛さに、一瞬固まってしまった。
私服姿のリアちゃん………。
そこでハッとした。
こんな事考えてる僕、変態みたいだな、と。
でも……これは心臓に悪い。
でも無自覚なリアちゃんは、僕の心をダメにする。
「タタだってかっこいいよ!!」
そして僕の手を取り、雑貨が並ぶ店内を目を輝かせて見ている。
「ねえ、このヘアゴム可愛くない!?あ、こっちのも可愛い!」
あー、もう………なんでこんなに可愛いの……。
僕は、顔がニヤけるのを抑えるのに必死だった。
カフェに入り、僕はあまり上機嫌じゃなかった。
その理由はというと。
店内の男が、全員リアちゃんを見て顔を赤く染めているからだ。
なんだよ、お前ら………リアちゃんのこと見てないで食べろよ。
メニューから選んでいる姿すらも可愛いリアちゃん。
目がいくのも納得だが………。
カフェの店員までもが、リアちゃんに釘付けになっている。
リアちゃんがパンケーキを食べているところは、正直言って結構やばかった。
「ん〜、おいしい………」
パンケーキを口にして出来る頬の膨らみが、僕には愛おしくてたまらなかった。
「タタ、はい、あ〜ん。」
!?
この時は、本当に耐えるのが厳しかった。
リアちゃんがあーんしてくるなんて………予想外すぎる。
耐えようとばかり考えてしまい、リアちゃんへの態度が冷たくなってしまう。
「ありがとう。………おいしいね、パンケーキ」
「うん!」
そう笑顔で返してくれたけど………一瞬顔色がくもったような?
気のせい………かな?
服を選びに行った時でも、リアちゃんは僕の前で服が似合うかどうかくるっと回って見せた。
可愛い………
と口に出そうになるのを我慢していた。
今日、僕はずっと浮かれていたんだ。
だから、リアちゃんが男に迫られるなんて。
御手洗から帰ってきたところだった。
リアちゃんが3人の男に囲まれていたのは。
とりあえず追い払ったけど………。
リアちゃんが他の見知らぬ男と話したという事実だけでも、僕は嫉妬してしまっていた。
ほんと、こうなったの全部リアちゃんのせいだから………。
君が可愛すぎるからいけないんだよ?
そんな事を思いながらも、リアちゃんを1人にさせたのは痛恨のミスだったと後悔していた。
そして、遊園地に来て大分遊んだころ。
僕には行きたいところがあった。
それは、迷路だ。
その迷路は木々で道が区切られている。
その木々の中に、ハート型の穴があいているものがあり、そのハートを見れた男女は一生幸せに結ばれるというジンクスがある。
僕はそんなのを信じるようなタイプじゃないが、リアちゃんという存在ができた僕にとっては、それが本当であって欲しかった。
でも、そんな事考えている暇じゃない。
リアちゃんとはぐれたのだから。
僕の不注意で………クソっ。
水野なら、こんなミスおかさなかっただろうな。
必死に探して、探して探して。
そんな時に、リアちゃんの小さな声が聞こえた。
聞き間違えるわけない。あれは、リアちゃんの声だ。
ソプラノの綺麗な、それでいてとても可愛らしい、唯一無二の声。
「リアちゃん……!」
リアちゃんを見つけた場所に、あったんだ。
ハート型に穴があいている木が。
でも、僕にそんな事を気にしている暇なんてなくて。
「リアちゃん、大丈夫?ごめんね、僕の不注意で……」
リアちゃんには、泣いたあとも見られた。
当然だ、こんな迷路で1人にさせて。
不安だったに違いない。
ああ、僕はこんな時でさえリアちゃんを傷つける。情けない自分を殴りたい。
リアちゃんは、こんな僕でも、1人から開放されて安心したのか、余計に泣き出した。
リアちゃんの事を、僕は何度傷つけた?
こんなんじゃ、水野の方が………。
………あれ?水野って、誰?
そんな事を思っていると、リアちゃんが口を開いた。
「タタ、助けてくれてありがとう。」
そう言って、万遍の笑みを浮かべた。
もう、無理………。
僕は、リアちゃんを抱きしめた。
「えっ、タタ………!?」
リアちゃんの困惑している姿までもが、愛らしい。
「リアちゃん。僕、記憶がなくてリアちゃんを困らせてるよね。でも、僕はリアちゃんの事を好きになってしまったみたい。」
「え………?」
リアちゃん、戸惑ってるよね………と、ふとリアちゃんの目を見ると、“いつも通り”笑っていた。
「うん、梨愛もタタの事好きだよ!」
あ、これはまさか………気づいてない?
僕は、リアちゃんの天然さを見誤っていたみたいだ。
念の為確認する。
「それは………水野に対しても?」
「水野って亮の事だよね?うん、好きだよ!」
案の定の返答。
まあ、今はこれでいいか。
俺の秘密を打ち明けた時には、たっぷりと溺愛してやるよ。
そして、リアちゃんは何故かハッとした様な顔を浮かべて立ち上がった。
「じゃ、じゃあ行こうか………」
「………」
やっぱり、リアちゃん元気ない?
「リアちゃん、どうしたの?なんか、いつもより元気ない気がして。体調悪い?」
すると、リアちゃんは思いもよらぬ言葉を返してきた。
「タタは、今日のお出かけ楽しくなかった?」
「………え?」
なんで、そんな事……。
「全然、そんな事ないよ。すっごく楽しい。」
「じゃあ、なんで………タタ、目を逸らしたりするの?」
「っ………」
あっ、リアちゃんに勘違いさせてる?
リアちゃんは僕の驚いた顔を見て、また何か勘違いしたようだ。
「やっぱり、楽しくないんだ……」
もう、こんなリアちゃん見たくないよ。
そう思い、僕はリアちゃんを否定した。
「違うよ!今日は、その、なんて言うか………リアちゃんが可愛くて、目が合わせられなかったというか………」
「……え?」
あー、もうっ。
僕は、リアちゃんを再び抱きしめた。
「これで、信じてくれる?」
そう言うとリアちゃんは顔を赤く染めて。
「う、うん………」
あれ、リアちゃん天然だからいつもみたいに笑って流されると思ったのに………。
あー、こんなん気ぃ狂う。
「じゃあ、そろそろ……帰ろっか。」
赤い顔を見られたくなくて手で口を隠しながらそういった僕。
そして、リアちゃんは僕が買ったアクセサリーを付けて、返事をした。
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