ワケありイジワル王子はツンデレ姫様を溺愛したい。

世界一幸せなクリスマス

【梨愛side】


ついにやってきた。




それは1年の一大イベント。




「クリスマス、どうしよう!?」




そう、クリスマス。




イルミネーションが街を綺麗に照らし、恋人たちが手を繋いで幸せを謳歌する、あの眩しいクリスマス。




今まではパパとママからプレゼントをもらって、亮や純麗達も呼んでクリスマスパーティをする、一般的なクリスマスを過ごしてきた。




が、今年となると訳が違う。




タタがいるから。




梨愛は、タタのことが好き。




初めて梨愛が好きになった人、初恋。




そんな時にやってきた大事なクリスマス。




今日はクリスマスの1週間前。




どうしよう、やっぱりデートは行きたいなぁ。




梨愛がタタとクリスマスにデートしたら………





『タタ、見て!綺麗なイルミネーション!!』




そうして梨愛が目を輝かせていると……




『僕は、イルミネーションよりリアちゃんの方が綺麗だと思うよ。』





なんて………




キャーー!



梨愛ってば、何考えてるの!




でも、もし本当にそうなったら……。




そうして1人で盛りあがっていると、後ろから声がした。




「リアちゃん?」




「ひゃいっ」




びっかりして、思わず噛んでしまった。




それもそのはず。




だって、リアちゃんって言うんだもん。




学園で梨愛の事をそう呼ぶのはただ1人。




ゆっくりと後ろを振り返る。




「た、タタ………」




「リアちゃん、おはよう。」




わーー!!




やっぱりタタじゃん!




今の見られた!?




梨愛が1人でニヤケながら廊下に立ってるとか………見られたら絶対変なやつだと思われる!




「お、おはよう………」




「うん、リアちゃん移動教室?」




あれ、この様子だと………見られてない?




廊下の突き当たりだからかな………。




まあ、とにかく見られてないならラッキー!




「うん、次理科で実験なんだ。タタは?」




「僕は先生におつかい頼まれて。」




「そうなんだ。」




タタ……優しいからもしかした良いように使われてるのかも、あはは……。




いやいや、こんな事考えてる場合じゃない!




ふう。




息を整えて。




「あ、あのさ……タタ。クリスマスって……」




「リアちゃん、クリスマス空いてる?」




梨愛の声を遮って、タタが聞く。




今タタ……クリスマスって言ったよね?




「空いてるけど………どうしたの?」




「リアちゃん、お……じゃなくて、僕とデート行こうよ。」




「………え!?」




まさか、タタの方から誘われるなんて……。




想定外。




でも、嬉しい………。




「もちろん、いいよ!」




「ありがとう。僕がしっかりエスコートするからね。期待してくれていいよ。」




「うん、楽しみにしてる!」




それにしても………付き合ってないのにデートって、なんだか照れる。




タタは梨愛に期待してって言ってるけど、梨愛だって期待して欲しい。




だって、好きな人とクリスマスなんだもん。




たとえ、記憶がなくても好きだから。




今回は、純麗の手も借りずに梨愛だけの力で。




タタを喜ばせてみせる!






クリスマス当日。




梨愛とタタは、午後4時に待ち合わせをした。




クリスマスに梨愛が出かけるのって初めてだから、パパには彼氏がいるのかってめちゃくちゃ聞かれた。




答えず逃げてきたけど。




5時半からライトアップされるここ。




そして、明るく照らされた道を進んでいくと、いかにもカップルが集まりそうなハート型のイルミネーションがある。




実は、そこに梨愛は細工をした。




パパの力はあまり借りたくなかったけど、桃瀬の名前を使って頼み込んだ。




タタ、喜んでくれるかなぁ。




そんな思いで待ち合わせ場所へ向かう。




タタ………は、まだ来てなさそう。




そうだよね、まだ早いもん。




前のお出かけの時もそうだったけど……梨愛早く来がち。




近くのベンチで座って待っていると……。




「リアちゃん。」




耳元でタタの声がした。




「わあっ!」




振り返ると、いつも通りかっこいい私服のタタが。




びっくりした………。




「もう、タタ……」




そう怒ろうとしたけど、梨愛はそれを辞めざるを得なかった。




だって、梨愛が好きなタタが、梨愛が好きな笑顔で




「メリークリスマス、リアちゃん。」




なんて、言うんだから。




それと同時に手渡されたピンクがベースの花束。




可愛くて……




「いい香り……。」




可愛らしいピンクの薔薇は、甘い香りを放って梨愛を包み込んだ。




「気に入って貰えた?」




「うん、タタありがとう!それと、メリークリスマス、タタ!!」




そう言うと、何故かタタはため息。




えっ……梨愛、何か変なこと言っちゃった!?




梨愛があたふたしていると。




「梨愛ちゃんが可愛すぎて、他の男に見られたくない……」




「っ……もう、タタ……」




そんな事言われたら、梨愛だっていつもこう思ってる。




「梨愛も、タタがかっこいいからほかの女の子に見られたくないなー、なんて……」




「っ……あーもう、心臓に悪い……。今日僕命日なのかな………」




「クリスマス命日にしちゃダメだよ!」




そんな冗談も言いながら、梨愛はタタにエスコートされて、輝く街中を回った。




タタは、梨愛を色々な所へ案内してくれた。




レストランとか、クリスマスの衣装を着たワンちゃんとネコちゃんがいるペットショップ、観覧車など………正直言って、今までで1番楽しいクリスマス。




色々な箇所を回っていくうちに、3時間が経過し、7時前になった。




タタ、さっきから色々プレゼントしてくれてるから………次は梨愛の番!




そうして、梨愛はタタをあのハート型のイルミネーションの場所へ招待した。




よーし!




「タタ、ここのハート見ててね。」




「?うん………」




そうして、7時になった時。




白色に輝いていたイルミネーションが、ピンクや赤色に変化する。




それは、ハートだけでなく、街全体のイルミネーションもだった。




「えっ、なんで急に……」




タタがそう呟いた時、暗くて見えなかったかもしれないけど、ハートの中にあった画面が光り出す。




そこには、『タタへ』の文字が。




それとオルゴールの音楽も流れてくる。




よし。




そして、梨愛はコートのポケットから手紙を取り出し、読み上げる。




「タタへ。急に手紙を読み出したら、びっくりするよね。今日は、梨愛の気持ちを伝えたくて、この場所へ来てもらいました。梨愛は、最初学園に入学していたのに、タタの名前すら知りませんした。純麗から話を聞いても、梨愛は清美拓也という人物に興味を持ちませんでした。でも、階段から落ちそうになっている所をタタが助けてくれて。その時、梨愛にはタタが王子様にしか見えませんでした。」




「っ………」




タタは、顔を赤く染めている。




一方で、それは梨愛も同じ。




手紙って、すっごく照れる……。




「それから、タタには助けられてばかりで、毎回梨愛はタタにドキドキさせられてばかりでした。そんな中、苦しい事も沢山あって、そんな時亮が助けてくれて、好きって言ってくれて。でも、梨愛はタタの事が好きです。もっと早く言えていればよかった。言えていれば、タタが事故にあって、記憶を失くす事も無かったかもしれない。でも………前のお出かけの時、タタが梨愛の事を好きって言ってくれて、すっっごく嬉しかったよ!記憶が無くても、思いは繋がる。梨愛は、この1秒1秒が奇跡だと思います。タタ、梨愛はタタの事が大好きです!!」




そうして、タタに抱きついた。




タタが、どんな言葉を返してくるのか。




不安で仕方がなかった。




でも、そんな不安は一瞬で溶けて。




タタは梨愛の事を抱きしめ返してくれた。




「先越された。」




え?




そう言って、タタはポケットから紙を取り出して。




それって………




「僕たち、考えること同じだね。」




タタが持っていたのは、手紙だった。




そうして、タタが梨愛に手紙を渡そうと手を伸ばした時。




全て上手くいっていたはずなのに。




その手紙はタタの手から滑り落ちて。




え………




タタは、顔をしかめてその場に座り込んでいた。




「タタ!?大丈夫!?」




「リア、ちゃん………僕は、大丈夫、だから……」




大丈夫なわけない。




立とうとしてるけど、痛さで立てないんでしょう?




梨愛はスマホを取り出して救急車を呼ぼうとした。




でも、タタは梨愛の手を止めて。




「タタ!?」




「他の人に、邪魔、される訳には、いかないから……」




そして、タタは梨愛にキスをした。




「!?た、タタ………っ」




嫌じゃない。むしろ嬉しい。




でも、タタは頭が痛くて……。




今はもちろん、タタの体の方が心配だった。




でも、タタの顔色は元に戻っていて。




「た、タタ?もう、大丈夫なの?」




タタは、今までで1番かっこいい笑みを浮かべた。




タタは梨愛の手を取り自分の頬にあてる。




「梨愛ちゃん、全部思い出したよ。梨愛ちゃん、大好き。」




今まで何度も呼んでくれているのに、今までで初めて心の底から“梨愛ちゃん”と呼ばれた気がした。




タタは、梨愛にもう一度キスをした。




深くて甘い、梨愛の事をトリコにしてしまうような。




いや、もう梨愛はとっくにタタのトリコ。




顔が赤くて、熱い。




そうして、さっき渡しそびれた手紙を、タタは梨愛に渡してくれて。




中にはこう書かれていた。




『あなたの事を、愛しています』




「っ………!」




梨愛は、思わず泣いてしまった。




タタが事故にあった時は、本当に怖くて。




梨愛のせいでタタが傷つくなんて耐えられなくて。




タタの目が覚めても、自分のことを覚えていなくて。




それでも、タタの事が好きで事故から今までにげずに頑張ってきた。




それが今日、報われたような気がして。




嬉しくて、嬉しくて、幸せで。




さっきだって夢見心地で気づかなかった。




あの花束のバラの本数の意味が、『最愛』だなんて。




タタは、口を開いた。




「梨愛ちゃん、僕と結婚を前提に付き合ってくれませんか。」




そんなのもちろん決まってる。




返事は………




「はい!タタ、愛してるよ!」




「うん、僕も。梨愛ちゃん、愛してる。」




2人は、きつくきつく抱きしめあった。




奇跡の光に照らされながら。






「梨愛ちゃん」




急に、落ち着いた声で梨愛の名前を呼ぶタタ。




「どうしたの?」




2人はハグをやめて向き合う。




「僕たちが付き合って、言おうと思ったんだ。僕の……いや、俺の秘密の事を。」




「俺?それに、秘密って………」




タタの瞳は真剣で。




梨愛は、タタの過去を幸せなクリスマスに、そしてタタと付き合い始めた日に知ることとなる。


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