秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「待ってちょうだい! それ、結構な重さがあるの。私、自分で持てるわ!」
 ハッとして、慌ててアズフィール様の後を追いながら、鞄を取り返そうと両手を伸ばす。
「いい、俺が運ぶ。重いならなおのことだ」
「でも……」
 戸惑う私に、アズフィール様が告げる。
「女はただでさえ、歩くのが遅い。その上、重い荷物を引きずってさらにトロトロされては俺が適わん」
 なかなかに傲慢さが滲んだ発言に、つい妙な負けん気を出して言い返してしまう。
「まぁ。『女は』だなんてすべての女性をひと括りにして、ずいぶんな言い草ね。自慢じゃないけど私、歩くのはもちろん、走るのだってそこいらの男性より速いんだから。ついでに腕力にも、ちょっと自信があるわ」
「……君は普段からよく走っているのか?」
 アズフィール様は一歩分後ろを歩く私を振り返り、静かに尋ねた。
 彼の表情は、特に気を悪くしたふうには見えなかった。けれど内心では、私のことをはしたないと呆れてしまったかもしれない。
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