秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 ありがたいことに、この世界にもヨモギは野山にたーんと生えている。採取、乾燥、粉砕、篩がけまでひとりで熟してもぐさを作るのは骨が折れるが、毎年ブロームや日頃から私の鍼灸を受けているみんなが手伝ってくれていた。
「ふむ。前に手伝ったが、あの作業はなかなか重労働だったな。毎回手伝ってやれんで、すまないな」
「お祖父ちゃんはお仕事で忙しいんだから、そんなのは全然気にしないでいいの。それよりどう、熱くない?」
「あぁ、ちょうどいい。天国のようだ」
 同じツボに同じようにお灸をしても、その時々の体調で熱さの感じ方が違ってくる。丁寧に祖父の様子を確認しながら、もぐさが燃焼する様子を見守った。
 もぐさが完全に燃えきったのを確認すると、四カ所のツボにもう一壮ずつ、〝肩井〟と〝天宗〟の二カ所にはさらにもう一壮据えて施術を終えた。
「はい、おしまい。お疲れさまでした」
「おぉっ、やっぱりメイサの灸はすごいな! 痛みが治っている、すっかり楽になったよ。ありがとうメイサ」
< 19 / 340 >

この作品をシェア

pagetop