秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「そっか。よかったら入って。お茶を淹れるから」
「ああ、ありがとう」
 私は炎石を内蔵したケトルでお湯を沸かし、ハーブティーを二杯分淹れると、お祖父ちゃんと応接ソファに並んで腰かけた。
「それにしても、ずいぶんといい部屋を賜っているなぁ。隣はアズフィール様の部屋なのだろう?」
「うん、そうなのよ。調度なんかは、なんならアズフィール様の部屋よりも豪華なくらい。しかも、結構新品が多いみたいなの。なんだか、もったいなくって」
「はははっ、そうか。……なぁ、メイサ。アズフィール様はよくしてくれているか?」
 お茶を啜りながら問うお祖父ちゃんの目は優しい。だけど、その瞳がどことなく寂しそうに見えるのは気のせいなのか。
「んー? そうねぇ。最初はどんなにこき使われちゃうのかなって思ってたけど、なんだかんだですごくよくしてくれてるよ。それに、一番心配してた街の人たちへの施術を、これまで通り自由にさせてくれてるのは正直ありがたい。実家への帰省もそうだね」
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