秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「それと思う人物はいる。だが、娘は……メイサの母は、最後まで名を明かさなかった。だから、本当のところは違っているかもしれん」
「……そっか」
 それは誰? こんな言葉が喉もとまで出かかったけれど、私は直前でそれをのみ込んだ。
「ねぇ、お祖父ちゃん。私、自分の生まれを誇りに思いこそすれ、引け目に思ったことなんて一度もないよ。両親のことは記憶にないし、正直なところよくわからない。でも、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんにいっぱいの愛情で育ててもらって、こんなに幸せなことってないわ。私、これからいっぱい孝行するつもりよ。だから、元気で長生きして」
「私は果報者だ」
「やぁね。こんなに優しくて理解があるいいお祖父ちゃんがいて、私の方がよっぽど果報者よ。もし私のお祖父ちゃんがお祖父ちゃんじゃなかったら、こんなおてんば娘いらないって、早々に屋敷を追い出されちゃってたかもしれないわ」
 目頭を押さえる祖父に、私はそっとハンカチを差し出しながら、わざとおどけた調子で告げた。
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