秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 実は、私が暮らすエイル神聖王国だけは少し特殊で、建国神話の中で女神・エイルの加護により祝福を受けた治癒能力者の存在が綴られている。しかし、これを史実と信じる者はなく、皆、おとぎ話だと思っている。
 建国神話の表記と私の能力の関連性は知りようもないし、この異能がバレたらどうなってしまうかも想像が及ばない。ただし、私が望む『自由気ままな暮らし』は、間違いなく奪われてしまうだろう。そんなのは御免だった。
 ……そうしてもうひとつ、このチートによって人の生死に介入してしまうことへの怖さもあった。
 とにかく、灸頭鍼はもうやらないと決めていた。それに祖父の症状は灸頭鍼のチートに頼らなくとも、私がお灸の施術で楽にしてみせる!
「お祖父ちゃん、今日は寝る前にもう一度お灸をしておこう。今度は私が部屋まで行くからね」
「すまないな。……ん? これからどこかに出かけるのか?」
 私がお灸に使った道具を纏め、持ち歩き用の鞄にしまうのを見て、祖父が尋ねた。
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