秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 アズフィール様の腕に包まれて彼の鼓動を感じながら、私はまだ見ぬ神に感謝を捧げた。
「……コホン」
 ん? ふわふわとした心地でアズフィール様の温もりに包まれていた私は、横から聞こえてきたわざとらしい咳払いにハッとした。
「おふたりさん。取り込み中のところ悪いんだけど、さすがにそろそろ戻らないと日が暮れるよ?」
 ぴゃぁああっ!
「そ、そうだったわね!」
 若干呆れを含んだヴァーデン王子の声に、私は弾かれたようにアズフィール様の腕の中から飛び退いた。
「チッ」
 アズフィール様の方から舌打ちみたいな音が聞こえたような気もしたけれど、これはきっと気のせいに違いない。
「おい、アズフィール。せっかく君の窮地を助けに来てやったというのに、その態度はいかがなものかと思うぞ」
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