秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「ハァ。結果的に助けられていたのはどっちだ? 俺が駆け付けなかったら危なかったぞ……もっとも、俺がいなければ、そもそもお前たちが後を追って危険に飛び込んでくることもなかったのだろうがな。まぁいい、ひとまず麓に戻ろう」
 アズフィール様はため息交じりにこぼし、私に向かってスッと手を差し出した。
「……さぁ、メイサ。俺に掴まっておくといい」
 山道は足もとが悪い。加えて急いでいたこともあり、私の靴は王宮にいた時のまま。シンプルではあったが、履き口の浅い靴はお世辞にも山歩きには相応しくない。ここに至るまでの道程も、正直、歩くのに難儀していたのだ。
「ありがとう」
 私は素直に、アズフィール様の手を取った。
 ヴァーデン王子はピタリと寄り添って歩き出す私とアズフィールを見て、意味ありげにヒョイと肩をひとつ竦め、一歩後ろに続いて歩きだした。
「それで? 君は何を知り、ここまで来るに至ったんだ?」
 アズフィール様の問いに、私は長い間を置いて口を開いた。
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