秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官（※その実態はお妃候補）に任命されました！

「庭で偶然、イザベラ様とセルジュのやり取りを聞いてしまったの。そこで、あなたに刺客が放たれたことを知ったわ……」
　これを告げるのは、精一杯の勇気だった。バクバクと煩いくらい心臓の音が鳴っていた。
　恐る恐る隣のアズフィール様を見上げる。
「イザベラ姉上が俺を……？」
　アズフィール様は目を見張り、愕然とした様子でつぶやく。
　それを見るに、アズフィール様はイザベラ様のことを欠片も疑っていなかったらしい。以前、アズフィール様が言っていた通り、ふたりの仲は良くも悪くも『普通』であり、命を狙われたことはアズフィール様にとって予想外。かなり衝撃を受けているようだった。
　彼の内心の動揺や痛みは、察するに余りある。私はかける言葉が見つからなかった。
「……そうか。そうだったのか」
　アズフィール様は一度グッと目を瞑り、自分自身に言い聞かせるように口にした。