秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 手足のひらには、各臓器の反射区と呼ばれるツボが無数にある。このツボに、施術をすればいい。
 男性をうつ伏せの体勢にするのは難しいから、自ずと狙いは男性の手のひらに定まった。通常、手のひらに灸頭鍼を施すことは稀だが、これから施す灸頭鍼はあくまで治癒の祈りを叶えるための手段。私は左右それぞれ、重ねたタオルの上に男性の手のひらを上向きに置いて固定すると、さっそく鍼を打ち始めた。
 ──トンッ、トトンッ。
 主だった臓器の反射区を選び、細く長い鍼を独特のリズムで穿っていく。ひとまず左右六カ所のツボに鍼を刺したところで、鍼の上に丸めたもぐさを乗せて火をつけた。
 固く両手を握りしめ、男性の完治を願い、くゆる煙に祈りを込める。
 もぐさの燃焼が半分ほどまで進んだ時、本能的にチートの発動を感じた。反応したのは、左手の親指と手首の真ん中ほどに施している灸頭鍼。
「ここは膵臓の反射区! 膵臓が損傷していたんだ!」
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