秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「大丈夫です! 応急処置の手順は心得ていますから、ひとりで十分です。むしろ、皆さんがいては気が散ってしまいます。ですからどうか、お願いします!」
 強引なのは自覚していたが、これから行う処置に同席させるわけにはいかなかった。
「わ、わかった。処置が終わったら声をかけてくれ」
 鬼気迫る私の様相に、ご主人たちはしぶしぶながら了承し、部屋を出ていってくれた。
 私はひとりになると、手早く鞄を開けて鍼灸の用意を始める。
 これから行うのは、灸頭鍼。完治を祈りながら患部やその反射区となるツボにこれを施し、傷病を癒すチートを発動させる──!
 男性に疑われるのは、腹部に落石を受けたことによる内臓損傷。しかし、ひと口に内蔵といっても胃や腸といった消化管に、肝臓、腎臓といった臓器まで多種多様だ。熟練の医師にだって、視診だけで出血部位を特定するなど不可能だ。
 ……ならば、ここで私が選択するのは、数多ある臓器の反射区となるツボへの施術だ。
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