秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官（※その実態はお妃候補）に任命されました！

　丁寧に筋の状態を見ながら、労わりを込めて伝えた。
　後悔ばかりだった人生を終えた後、どんな神様の悪戯だろう、私は前世の記憶を持ったまま転生を果たした。その時に、『今世は後悔しないように生きよう』と決めたのだ。
　前世の私は、鍼灸マッサージ師をしながら男手ひとつで育ててくれた父を愛し、尊敬していた。それなのに照れや、この日常がずっと続くものだという慢心から、言葉や態度で伝えられないまま父は逝ってしまった。
　だから今世の私は、大好きな家族にいつだって惜しまずに思いを伝えるようにしている。
「わかったわかった。メイサはしっかりしているようでいて、寂しがりで甘えん坊のままと見える。そろそろ爺離れしないと、いい相手が寄ってこないぞ」
「そんな人、いなくていいよ。大好きなお祖父ちゃんやお祖母ちゃんと一緒にいられる今以上に大事なものなんてないもの」
　陰湿で意地悪な社交界は大嫌いだ。微笑みの下で私生児の私を嘲る貴公子らと親交を深めるなんて、考えただけで肌が粟立つ。