不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「うん。そうだったわね」
なんとか気を取り直して笑みを返すと、店員がテーブルにやってくる。ジャスミン茶と冷菜の蒸し鶏やクラゲ、ピータンがテーブルに並んだ。
紗那が率先して取り皿を持ち、私の分までよそってくれる。
「ほら、腹が減っては戦はできぬ、だよ」
「ありがとう」
その後も食事をしながら斗馬さんたちのテーブルを窺っていたが、彼らは私たちより先に席を立ち、会計を済ませて店を出て行った。
彼らのテーブルに残っていた食器は、中国茶の茶器のみ。食事をしていたわけではなかったようだ。
仲睦まじく中華料理を楽しまれるよりはよかったけれど、新たな疑問も湧く。
「お茶ならカフェで飲めばいいのになんでわざわざここで?」
「ホントね。家に帰ってから、斗馬さまにサクッと聞いてみたら?」
「うーん……」
斗馬さんに事情を聞いて、スッキリしてから旅行に行く。それがベストだとは思うけれど万が一歯切れの悪い回答だった場合、それを旅行前にわざわざ知りたくない。
たった一度の浮気で離婚を切り出した過去があるのに、今はただの疑惑すら見ないふりをして彼と旅行に行こうとしている。
あんなに潔癖だった私はどこに行っちゃったんだろう。