不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「聞くのは、旅行が終わってからにしようかな……」
「大丈夫? それはそれで旅行中、つらくならない?」
紗那の疑問はもっともだと思う。夫の浮気疑惑をそのままにして新婚旅行に行くなんて、普通に考えたら精神的につらいに決まっている。それでも、今すぐ斗馬さんとの関係が壊れてしまうより、かりそめの夢を見ることを選びたいのだ。
愚かな選択だとわかっていながらもそちらを選んでしまう、その矛盾の理由も、なんとなく見当がつき始めている。
私は彼に漠然と憧れを抱いていた少女時代よりも、片想いをハッキリ自覚した思春期よりも、そして二カ月前、結婚したばかりの頃よりも――きっと今が一番、斗馬さんを愛しているのだ。
「さすがに、異国の船上で私たちを邪魔する人はいないと思うの。だから、旅行中だけは、何も考えず斗馬さんを見つめていたいなって」
「千帆……」
痛々しいほど不器用に斗馬さんを想う私の気持ちを察したかのように、紗那が眉を八の字にする。
「帰ってきたらまた紗那の前で泣いちゃうかもしれないけど、その時はまた付き合ってくれたらうれしいな」
「付き合うよ、もちろん。付き合うに決まってる……!」
「ありがとう」