不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

 簡単に落ちてなるものですか。浮気者の斗馬さんのことだから、私を懐柔するために甘い言葉を並べているだけかもしれない。

 彼の本性を、きちんと見極めなきゃ……。

 自宅の前まで来ると浮ついた心をなだめてきゅっと唇を引き結び、私は新居へ足を踏み入れた。

 このマンションを用意してくれたのは斗馬さんで家具選びなども彼に全てお任せしていたけれど、玄関から廊下、寝室、バスルームにリビングに至るまで、グレーや黒の落ち着いた色でまとめたホテルライクなインテリアに、彼のセンスの良さを感じた。

 リビングで軽く寛いでいたら、斗馬さんのスマホに電話が入った。斗馬さんは短い通話を終えると、脱いだばかりのジャケットを羽織り、車のキーを持つ。

「悪いが行ってくる。横須賀の造船所のリニューアル工事が完了したらしい」

 出かける支度をしながら話す彼の目はわかりやすくキラキラしていて、船や造船所のこととなるとテンションが上がるのは昔から変わっていないなと、思わず笑みがこぼれた。

 斗馬さんは少年の頃から、飛行機よりも電車よりも、大海原を悠然と進む船が大好きなのだ。

 ひとりになった私はマンション内のカフェで軽く食事をし、部屋に戻ってシャワーを浴びると夫婦の寝室でキングサイズのベッドに横になった。

 この部屋のほかにもベッドルームは三つもあるけれど、斗馬さんがベッドを用意してくれたのはここだけ。まるで私が逃げられないようにしたみたい。

 今日はひとりで先に眠れるからよかったけれど、明日からどうしよう。

 悩みは色々あるけれど、結婚式、それに色々な感情の起伏で疲れていたらしい。目を閉じただけで、あっという間に夢の中に誘われた。

< 13 / 172 >

この作品をシェア

pagetop