不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

 夫婦で濃密な時間を過ごした新婚旅行もあっという間に終わってしまい、カレンダーは九月に変わった。千帆とは旅行後も頻繁に体を重ね、着々と愛を育んでいる。

 しかし、俺たちにとって大切な千帆の誕生日、九月十七日。その直前の三日間、千帆は仕事で宮崎への出張が入ってしまった。

 残念だが、現在俺たち夫婦の関係は極めて良好。離婚の〝り〟の字も感じさせない毎日を送っているので、千帆の意思は出張後すぐに確認すればいいだろう。

 無事離婚を回避したら、夫婦で彼女の誕生日を盛大に祝おう。出張先まで出向き、なにかサプライズを用意するのもいいかもしれない。

 長いようで短かった三カ月と少しの日々は、千帆への愛を再確認するいい機会だった。

 あと少しで、ようやく俺たちも普通の夫婦になれる――。

 千帆が宮崎に発つその日まで、俺はそんな晴れやかな気持ちだった。数日前、延期になっていた夕飛と美鶴さんとの食事会も叶い、ふたりの復縁も見届けることができた。

 そうして気分良く目覚めた、水曜日の朝。

 大きなキャリーケースを片手に玄関で靴を履く千帆を見送っていると、彼女は出て行く直前、凛とした眼差しで俺を見つめた。

< 147 / 172 >

この作品をシェア

pagetop