不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

 今回宿泊しているホテルもツアーに組み込む予定であるため、全室オーシャンビューの、グレードの高いリゾートホテルを利用している。

 時間と体力に余裕があれば、ホテル内のプールやスパも体験するつもりだったけれど、そんな気分ではない。

 夕方には東京に帰るけれど、その前に一度斗馬さんに連絡を入れる?

 でも、なにをどんなふうに伝えたらいいのか……。

 考え事をしつつフロントに預けていたキーを受け取り、エレベーターホールへ向かおうとしたその時だった。

「――千帆!」

 エントランスの方から斗馬さんの声が聞こえ、私はぴたりと足を止めた。

 嘘よ。彼がこんなところにいるはずがない。一方的に離婚を突きつけた後悔で、私ったら空耳まで聞こえるようになったの?

 疑いながらも、心臓は勝手にドキドキする。ゆっくり声のした方を振り返と、そこには確かに斗馬さんが立っていた。

 いつも完璧なスマートさで三つ揃えのスーツを着こなしている彼が、きっちりセットした髪を乱し、焦った表情を浮かべている。

 まさか、東京から急いでここへ? 仕事は?

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