不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
さりげなく斗馬さんが吐いたセリフに、ドキッとする。私だけは特別と言われたようで、勝手にくすぐったい気持ちになる。でも、次の瞬間『天使』のふた文字が脳裏をかすめ、胸がずしりと重くなった。
苦手じゃない女性はもうひとりいるくせに、いい加減なことを言わないで。
「弁当、千帆の分もあるからよかったら食べないか?」
ぷりぷりしていたところで、意外な言葉をかけられる。椅子から立ち上がった斗馬さんが、冷蔵庫から彼の食べているのと同じ弁当の箱を取り出した。
ずっと食事がおあずけだったので、つい怒りを忘れる。
「ありがとうございます、いただきます。食事をしてくるって言ってあったのに、どうして私の分まで?」
「いや、実はなにも考えずについふたつ買ってしまったんだ。ひとり暮らしの独身生活の方が圧倒的に長かったのに、夫婦ふたり分買うのがもう習慣になっているらしい」
照れくさそうに言って、首の後ろを撫でる斗馬さん。彼にとって、私との結婚生活はそんなに当たり前の日常になりつつあるのだ。
もし離婚した後、斗馬さんがうっかりふたつのお弁当を買ったら、ひとりで苦い気持ちになるのかな。その姿を想像したら、胸の奥がきゅっと切なくなった。