不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

 車だったので、いつもより二十分も早くオフィスに到着した。誰もいないだろうと思いながらオフィスを覗くと、ひとりで仕事をする佐藤くんの姿が。

 さっそく昨日の報告をするいい機会かもしれない。彼はがっかりするかもしれないけれど、先延ばしにしていてもしょうがない。

「おはよう。もし時間あるなら、昨日の件で少し話せない?」

 自分のデスクにバッグを置き、手帳やペンケースを出しながら彼に尋ねた。

「ああ、おはよ。もちろん平気。なんかわかった?」

 デスクに身を乗り出し、佐藤くんが私の顔を覗く。私は周囲を見回し、廊下から話し声や足音が聞こえないのを確認すると、佐藤くんを見つめた。

「それが……」

 私は昨日斗馬さんから聞いた話を、そのまま彼に伝えた。

 美鶴さんはなぜか危険な客室に戻ろうとしていて、そのさなかに火傷を負ったらしいこと。その行動の理由はわからず、斗馬さんはただ強引に避難させるのが精いっぱいだったこと。

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