不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「ううん、別にそんな風に思ってない。でも、目的が済んだからって辞めたりしないよね?」
「ああ、それは考えてない。船上での事故に遭った妹を持つ身としては、少しでも安全対策に穴のある会社だったらとことん調査してやろうとか思ってたけど……真宮クルーズはそんな心配いらない会社だったし、仕事も楽しい」
そう話す佐藤くんの表情はすっかり明るくて、ホッとする。それに、会社のことを褒められるのは、自分の父が褒められているようでもあり、誇らしい。
「そっか。じゃ、今日もその楽しい仕事を一日頑張りましょう」
「うん。改めてよろしく」
間もなくオフィスに同僚たちが出勤し始め、いつもの忙しない日常が始まった。
定時で退社した後、朝と同じ車で迎えに来てくれた斗馬さんが、お洒落な一軒家のフレンチレストランに連れていってくれた。
シェフは長年剣先家と懇意にしているらしく、わざわざ玄関まで出迎えに来る歓迎ぶりだ。
お互い丁寧に挨拶を交わした後は、世界各国のVIPをもてなす時に利用するのだという個室に案内される。天井にはクリスタルのシャンデリアが瞬き、上品なゴールドと白を基調としたインテリアに囲まれた、豪華だが品のある部屋だ。