不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
タキシード姿のスタッフに椅子を引いてもらい、腰かける。斗馬さんは軽くメニューを眺め、アペリティフのシャンパンを注文した。
斗馬さんは運転があるから飲まないかと思いきや、帰りは剣先家お抱えの運転手のひとりを呼び寄せて運転を代行してもらうそう。やはり、彼の家は格が違う。
注文を受けたスタッフが個室を出て行くと、なんとなく沈黙が流れた。
気まずさを感じてちらっと斗馬さんを見たら、彼の方はジッと熱い視線を私に注いでいたので、心臓が跳ねた。
「斗馬さん……?」
「こういうデートは久しぶりだなと思ってな。メイクを落としたナチュラルなきみと家で手料理を食べるのも幸せだが、こうして美しく着飾ったきみと食事をする時間も同じくらい大切にしたいものだ」
きりりと吊り上がった目を優しく細めた彼に真正面から甘い言葉を囁かれ、頬に熱が集中する。返事にまごついているうちにシャンパンが運ばれてきたので甘い空気も薄れ、なんとか動揺を収める。
私たちは美しい泡が立ちのぼるグラスを目線に掲げ、乾杯した。