公爵の娘と墓守りの青年

包帯や消毒薬が入った木箱を元の位置に戻しているイストにウェルシールが声を掛ける。

「俺はここに残ります。隊長も眠ってますし、誰も居ないのも危ないですから。それに、ミシェイルは小さい頃から隊長と一緒にいたので大体は知っています。ここは任せて、どうぞ行って下さい、ウェル様」

穏やかに笑い、イストは告げた。
その笑みは何処となくカイに似ていて、彼と共にいたことを物語っているようにウェルシール達は感じた。

「……分かった。行ってくるね、イスト」

「ええ。行ってらっしゃい、ウェル様」

「――私も、一緒に行ってもいいですか……?」

いきなり、二つあるベッドの一つから声が聞こえた。
小屋にいる全員が驚いて、声の方に顔を向ける。
眠っていたはずのトイウォースがベッドから上半身を起こし、こちらを見ていた。

「トイウォース殿……」

「すみません、話を聞かせて頂きました。私も一緒に行ってもいいですか?」

「ま、待って下さい。トイウォース殿、あの……」

今までと様子が違うトイウォースに戸惑い、上手く言葉が出て来ないウェルシールは詰まった。

< 231 / 482 >

この作品をシェア

pagetop