公爵の娘と墓守りの青年
あっさり過ぎるカイの言葉にネレヴェーユの思考が少しだけ固まる。

「えっ……じゃ、じゃあ……」

それだけを言って、ネレヴェーユは言おうとした続きの言葉が出て来ず、口元に手を当てた。

「言おうとしていることは大体分かるよ、ネリー」

苦笑いを浮かべ、カイは頷く。

「カエティス……貴方は大丈夫なの? リフィーアさんも……」

切株から離れて、ネレヴェーユはカイの前に座り、彼の手にそっと触れる。
また泣きそうな表情でカイを見上げる。

「俺は大丈夫。リフィーアちゃんもしっかり守るよ。彼女の両親とも約束したしね」

安心させるように穏やかな笑みを浮かべ、カイはネレヴェーユを抱き上げ、切株に座らせる。

「貴方とリフィーアさんの関係のこと、彼女は知っているの……?」

「いや、多分、知らないと思うよ。彼女の周りで知っているのは今の公爵だけだと思う」

「リフィーアさんには話すの?」

「話すつもりは今のところないよ。何事もないかもしれないし」

胡座を掻いたまま、カイは膝の上に頬杖を突く。

「……そうね。でも、何かが起こってからじゃ遅いわ」

「それでも、リフィーアちゃんには穏やかな人生を送って欲しいからね」

< 89 / 482 >

この作品をシェア

pagetop