公爵の娘と墓守りの青年
穏やかに目を細めて、カイは頬杖を解く。
「だから、極力言わないでおきたいんだ」
そう接いで、カイは水色と銀色の珍しい目をネレヴェーユに向けた。
「ネリー、これから君はどうするんだい? 神殿に帰るのかい?」
「え? そうね。そのつもりよ。でも、今までとは違って自由に出入りが出来るから、またここに行くわね」
切株から立ち上がり、ネレヴェーユは微笑した。
「いつでもおいで。俺はここにいるから」
カイも立ち上がり、ネレヴェーユに小さく笑みを返す。
その笑みが、出会ってから時折見せる少し切なげな笑みで、ネレヴェーユは小さく胸に痛みを感じた。
「――カエティスっ」
少しだけ声を上げて、ネレヴェーユはカイに抱き着いた。
驚いたカイは慌てて彼女を抱き留める。
「ネ、ネリー……?」
「大丈夫だから……私はいつでも貴方の傍にいるから……」
そっとカイの首に腕を回し、ネレヴェーユは彼の耳元で告げる。
「え……」
しばらく、ネレヴェーユが何のことを言っているのか理解出来ず、カイは目を瞬かせた。
やっと理解出来たカイは嬉しそうに笑って、ネレヴェーユの耳元にそっと囁いた。
「ありがとう、ネリー」
ネレヴェーユの背中に腕を回し、カイは彼女の頬に優しく口を触れた。