公爵の娘と墓守りの青年
木々に止まる鳥達がざわめいている。
眉を寄せて、カイは困ったように頭を掻いた。

「……気付いているか? この気配に」

墓地の奥、一点を見つめているカイにビアンは尋ねた。

「気付かなかったら、墓守り失格だよ」

「……動き出すのかもな」

「うわぁ〜、嫌だなぁー、それは」

中腰で座り込み、カイは嘆息する。

「永遠に動き出さないで欲しいな」

率直な感想を述べ、カイは顔を顰める。

「噂にしか聞いたことがないから分からないが、動き出さないで欲しいのは確かだな」

ビアンも大きく頷き、カイが見つめている方向――墓地の奥を見遣る。
墓地の奥と同じ方向の空は徐々に夕暮れに近付いている。
その夕暮れに近付く空が、カイとビアンの不安を現しているかのように、橙色と青色を混ぜたような色をしていた。








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