公爵の娘と墓守りの青年
驚いたネレヴェーユは勢い良くカイの首から離れ、何度も目を瞬かせて彼を見る。

「こちらこそ、ありがとう。カエティス」

顔を真っ赤にしてネレヴェーユはカイが触れた頬にそっと手を当て、嬉しそうに微笑んだ。
そして、ネレヴェーユもカイの頬に優しく口を触れる。

「それじゃあ、私、帰るわね。また行くわ」

「うん、待ってるよ」

穏やかに笑って、カイは頷いた。
ネレヴェーユも花のように笑い返し、ゆっくりと消えた。
ネレヴェーユがいた場所を穏やかに見つめ、カイは静かに息を吐いた。

「……やっぱり、ネリーに弱いし、敵わないなぁ」

柔らかい風が、カイの所どころ金の色が混じっている赤い髪を弄ぶ。

「……熱い話は終わったか? カエティス」

背後から低い少し不機嫌な声が聞こえ、カイは振り返った。

「熱いかは知らないけど、話は終わったよ、ビアン」

ビアンの言葉に苦笑しながら、カイは墓地の奥を見遣った。
< 91 / 482 >

この作品をシェア

pagetop