BeAST
「連絡ぐらいしろ…心臓に悪い」
「うん」
「鹿瀬さん、困らせんな」
「うん」
「体調は」
「全然平気」
「……」
環のシャツを握る。
「ふふ、嬉しい?僕が迎えに来たの」
分かってて、聞く。
忘れてた。こいつは優しいだけの人間じゃない。
流石だな、笑えねえ。
俺を変えた人間。
「……嬉しいに決まって」
俯いてそう言いかけた。
環は俺の腕を引いて、俺を抱きしめる。
「ごめん、意地悪したね。」
環の腕の中は安心する。
全部を肯定してくれるようで。
「灯織……?」
そう呼ばれて、ハッとする。
やべえ、ここ学校だ。
環も腕を緩める。
「こんにちは。灯織のお友達かな」
柔らかく、いつも通り。
ダメだ、幸大のでかい声は体に障る。
「え、あ、はい」
緩みきった気持ちを、もう一度引き締める。
ゆっくり振り返れば、カラオケにこれから行くであろうソイツらが目をぱちぱちと瞬かせている。
「えええええと、女じゃなくて、男?」
パニクった幸大が壮絶な勘違いをする。
「ひお、ごめんね。ひおがこの学校で人気者なの忘れてた」
絶対嘘だ。
「違うだろ、見せつけに来たんだろ」
「ふふ、さすがひお。そうだよ、ひおが人気者なの嬉しいけど、こう目の当たりにすると、我慢できなくて」