私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
「紗絵、今日はデートしよう」

「えっ?」

突然の誘いに驚く。

「明日の午後、入院だからさ。気分転換に」

「え、でも、蓮斗今夜は夜勤でしょう? 疲れちゃうよ」

「そんなヤワじゃないって。それに・・」

一瞬、彼の表情が曇った。
このところ、時折見せる表情だ。

蓮斗・・?

「いや、さっき映画館の予定見たら、紗絵が見たいって言ってた映画の上映が始まってたから、一緒に行こうよ」

「・・・・」

「紗絵?」

「蓮斗・・何か、思ってることがあるなら話してほしい。この頃、時々蓮斗の表情が曇るのが気になってた」

そう言った私を見て、彼は小さなため息をついた。

「バレてたか・・」

「うん」

「前に紗絵が言ってたこと、この頃よく思い出すんだ。
『もしかしたら、何かの間違いで、麻酔がかかったまま二度と会えなくなるかもしれない』
結婚して、誰よりもそばにいるのに、守ってやれる存在になったのに、もしそうなったら・・って考えると、怖くて。何かしてないと、そればっかり気になってどうしようもない」

「蓮斗・・」

「だからせめて、紗絵と楽しい時間を過ごしたくて」

病気を抱えて苦しいのは、当然本人ではあるけれど、また違った苦しさが家族にもあるのだと、改めて思った。

「どうなるかは、もうその時にならないと分からないんだけど・・・・。
いまこんなふうに、蓮斗と一緒にいられるだけで、私は幸せ。好きになってくれて、家族になりたいと思ってくれて、本当にありがとう」

彼は俯いた。
肩が、小刻みに揺れている。

私は、俯いた彼をそっと抱きしめた。

そして、肩の揺れがおさまるまで、しばらくそのままでいた。
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