私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
評価されて出世して、いつか役員になるのが夢だった。

雑誌のインタビューで、女性エグゼクティブの姿を見て憧れてたんだよね・・。
デザイン性のあるカッコいいスーツを着て、ハイヒールで颯爽と歩き、いつもキラキラ輝いている ーーー。

いつだってクッキリと描けていた未来が、なんだか少しぼやけてきたのを残念に思った。

病気になって、もう諦めたのか。
結婚して、現実味が無くなったのか。

頑張って積み上げてきたものが、緩やかに崩れていくような気がした。

ウキウキと袖を通したスーツや、ワクワクで足を入れたハイヒール。
また活躍の出番は、来るのだろうか。

ぼんやりと考えていると、バッグの中のスマートフォンが震えた。

『紗絵、表で待ってるよ』

彼のメッセージを読んで、ハッとした。

考えても仕方がない。
いまは病気に向き合うと決めたのだ。

自分の身体のために、ふたりの未来のために、仕事を休むと決めたのは私なのだから。

「紗絵! こっちこっち」

ビルを出ると、彼が私を呼ぶ声がした。

「蓮斗、どうしたの? びっくりした」

「今日研修でさ、仕事早く終わったんだ。紗絵と晩ご飯食べに行こうと思って、迎えにきたんだ」

私に笑顔を向けてくれる彼を見ながら、この人に、私がキラキラと思い描いていたものを話したらどう感じるのだろう・・と思った。

素敵だね、と言ってくれるだろうか。
もう諦めたら、と言うだろうか。

「紗絵?」

「あ、うん」

「どうした、具合良くない? ご飯、また今度にしようか?」

「そんなことないよ、大丈夫。何食べようかー」

いまの仕事を続けるにしても、他の道を選ぶにしても、まずは身体を治さないと。

アタマでは理解しているものの、どこかまだモヤモヤしている自分に、そう言い聞かせた。
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