最後の夏をもう一度
神社

          * 


「なぁ、じいちゃん!ここでいいのか?」



セミの声が耳につく夏の日。


夏休みというのに、俺はじいちゃんの引っ越しの
手伝いをしている。


じいちゃんは足腰が弱く、一人で生活をするのは厳しい。なので、俺の家の空き部屋に引っ越しが決まった。



「とりあえず、そこに置いといてくれ!」



足腰が弱いという割には元気がある。


俺がいつもじいちゃんの家に行くと、小言をいつも言ってくる。


本当にうるさいと感じるほどだ。


だけど、俺はそれほどじいちゃんのことが嫌いではない。


うるさいと感じる小言は俺のために言ってくれている、と分かっているから。



「足は大丈夫なのか?」



だからこそ、じいちゃんのことが心配になるわけだ。


人がこの世から居なくなるという恐怖を俺が一番知っているから。


愛する人を亡くすのは辛いことを知っているから。



「そんなこといいから、さっさと荷物持ってこい!」



じいちゃんはこんなことを言っているが、満更でもなさそうだ。



「はいはい」



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