最後の夏をもう一度


大事な人のお父さんとわかれた後、俺は目の前に
広がる石段を一段ずつ上っていく。


普段、上るような木やコンクリートで出来た階段とは違い、表面がでこぼこしていた。


それに、一段の石の大きさが全て違うので、転けそうになりながらも俺は慎重に足を進めた。


どんどん上っていくと、石段の間から黄色く、茎の長いきのこが上へ上へとはえている。


俺はそのきのこが食べれることを知っていたし、踏まれたら可愛そうだと思った。


だけど、そのきのこからは『沢山の生きる』を感じ、そのままにしておく方がいいような気がした。


自然界で生き抜くのは相当しんどいだろう。


だから、その中で、命を絶やさず生き抜けるのはごくわずか。


俺もこれくらい、一生懸命生きないといけないのかもしれない。


今はこんなことを考えたくない気分だけど、考えてしまう。


そして、『生きる』を考えると同時に『死ぬ』ということも考えてしまう。



最後の階段を一段、上り終え、頂上についた。


頂上には、小さな神殿があった。


そして、神殿の隣には一つのベンチ。


俺はベンチに座り、指でなぞる。


昔、大事な人と花火を見たな。



思い出が蘇ってくる。



< 4 / 12 >

この作品をシェア

pagetop