男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
「……あの、ジークハルト様。向こうまではかなりの距離があるので、そんなに怯えて構える必要はないかと」
「す、すみません。数が多いし、角から急に出てこられるとなんだか条件反射で……」

 反射条件ね、とエリザは作り笑顔で思う。

(あなたが隠れているのは女性の後ろなんですが、それは平気なんですかね?)

 蕁麻疹はまた出ないようなのでいいのだが、やはり、解せない。

 ルディオから憐れむ視線を向けられているが、それも無視する。

「ジークハルト様、安心して欲しいのですが、これまでもご一緒に歩いていて問題なかったように、女性達は無害です。彼女達も自分の仕事を頑張っているのです。目が合ったら、労う気持ちでちょっと応えてあげればいいんです」

 ひとまず溜息をこらえ、落ち着かせるように声をかけた。

「というわけで、心の準備はいいですか?」
「エリオは容赦がない時があるなー。切り替えが早いというか」

 ルディオが感心したように口を挟む。

「そんなことはないよ」
< 156 / 392 >

この作品をシェア

pagetop