男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
「そう、『育てられた』ね。そのへんについても聞きたいと思っていたんだ。ひとまず王子としてではなく、ジークの友人のフィーとして君と話したい。緊張しないで、どうぞお菓子も食べて?」
「お、お話を先に聞きます」

 親切を断ることすら緊張を覚える相手だったので、首をぷるぷると横に振ったのも緊張が加算された。

 正直、今は菓子を食べるような余裕はない。

(彼は――私に他の、なんらかの事情があると疑っている)

 魔術師であると初めて聞かせたルディオと違い、彼は『魔術師の弟子』という肩書き以上の、その向こうを見据えている。そんな気がした。

「やれやれ。まるで、私が苛めているみたいだねぇ」

 美貌の王子は、柔らかい雰囲気のまま小さく苦笑した。

「ルディオの報告で『魔術師の弟子』とあったけど、それは魔法使いと全く違ったもの、と認識していいのかな」
「違い、ますね。魔力を使う点では同じですが……」
「でも君は、魔力を持っていないね?」

 断言されて、どきりとする。

「なぜ私が分かったか不思議かい? この国の王族は、みな魔法使いだ。私を含めて、ね」
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