男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
 ジークハルトが、やけにきらきらとした満面の笑みを浮かべた。

「とても楽しみです」

 そう言って彼がぎゅっと抱き締め、にーっこりと笑う。

 美しい笑顔なのだが、どこか胡散臭いように感じてしまうのは彼の顔立ちがあまりに整い過ぎているせいだろうか。

 本人の同意も得たので、後は解除薬を飲ませるだけだ。

 きっと彼が美人過ぎるせいだろうとエリジは納得することにした。

「そうですね、私も嬉しいです」

 エリザはにこっと笑い返した。隣にいたルディオが、嫌な予感を隠しきれないように表情筋を強張らせていた。

(それにしても私、本当に、女の魅力が微塵にも感じられていないくらい懐かれてるよなぁ)

 彼の腕の中に囲われたままであることについて、エリザはそんなことを思った。

 先日、ベッドで一緒に仮眠を取らされてしまった時に痛感した。この程度の密着ではまったくバレる気配さえない、と。

 呪いが強まったせいで、ジークハルトの精神年齢かエリザの前で急激にがくんと下がるせい。
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