鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「はぁい。
すみません、真奈美(まなみ)さん」

女性としてはかなり背の高い、真奈美と呼ばれた方が神月さんの首根っこを掴まえる。

「じゃあ、あとでねー、苺チョコちゃん」

そのままずるずると引きずられていきながら、神月さんは私へ投げキッスをした。

「……なんだったんだろ、あれ」

急に静かになり、気が抜けてふらふらと自分の席へ座る。

「チョーコ。
神月さん、こっち来なかったか」

とりあえず気を落ち着けようと、飲み頃になったコーヒーへ口をつけようとしたら、今度は袴田課長がやってきた。

「たったいま、ずるずる引きずられていきましたけど……」

「あっ、そう。
会議室で待っていてくれって言ったのに、いなくなるんだもんなー」

迷わずに袴田課長の手が私の手からカップを奪い、中のコーヒーを飲む。

「なんで神月伶桜がここに?」

「ん?
打ち合わせ。
またいなくなると困るから、さっさと行くかー」

空になったカップを机の上に置き、肩をこきこき鳴らしながら袴田課長も消えていった。

「……だから、なんの打ち合わせですか。
そして私のコーヒー飲んでいくな」

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