鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「うん?
僕が助けたかっただけだから、別にいいんだよ」

またにぱっ、と彼が笑う。
なんだかそれはまるで、花でも咲いたみたいだった。

「で、これ。
今度の商品のパッケージデザインだよね?」

彼の長い指がモニターを指さす。

「苺チョコちゃんのデザインなんだ。
どんなのができあがるのかなぁ。
楽しみだ」

「えっ、……と」

彼が私の恩人であるのは理解した。
できあがりを楽しみにしてくれているのも嬉しい。
が、なぜ彼はここにいるのだ?
そして発表前の新商品の情報がダダ漏れだがいいのか?
さりげなく周りを見渡してみたけれど、先ほど、真奈美さんと呼ばれていた女性の姿も、袴田課長の姿もない。
そしてここはパーティションで区切られているため、座っている彼の姿は他の人に視認されにくい。

「……あの。
どうして神月さんがここに?」

仕方ないのでそろーっと訊いてみた。

「ん?
この商品のモデル、僕がすることに決まったからだよ。
今日はその、顔合わせ」

「ああ、そーゆー」

「そーゆー」

オウム返しした神月さんは、にこにこ笑っている。
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