鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
なんだかそれは、私が抱いている神月伶桜像とは大きくかけ離れていた。

「伶桜!
どこ!?」

唐突に女性の大きな声が響き渡り、思わずびくりと身体が震える。

「真奈美さーん、こっちだよー」

けれどかまうことなく、神月さんは立ち上がってひらひらと手を振った。

「だから!
勝手にふらふらしないで、って言ったでしょ!」

「えー、だってここ……」

「だってじゃない!」

長身の神月さんと釣り合うほど、背の高いその女性の怒鳴る姿は迫力があって、こっちがビクビクしてしまう。

「そーですよねー、機密書類とかありますから、勝手に動き回られると困ります」

おおっ、珍しく袴田課長が正論を言っている。
明日は雪ですか!?

「あ、袴田さん!」

神月さんが肩に手を乗せ、そのまま椅子ごとくるりと私を回して袴田課長の方を向かせる。

「この仕事の僕のアテンド、苺チョコちゃんにお願いしたい!」

「苺チョコ……?」

「ちゃん……?」

「はぃーっ?」

袴田課長と女性の、不審の目が痛い。
が、当の私だってなんだかわけがわかっていないのだ。

< 36 / 105 >

この作品をシェア

pagetop