鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
うきうきとしている彼と、到着したエレベーターへ乗り込む。
カフェテリアのある階を教えていないのに、彼は迷いなくその階を押した。

「なにを飲むかい?
僕が奢るよ。
あ、ケーキもあるんだ。
苺チョコちゃんはやっぱり、ショートケーキが好きかな」

さっさとカウンターへ立ち、神月さんが注文をはじめる。

「あ、いえ。
お客様に払わせるわけには……!」

「いいの、いいの。
ほら、なににするんだい?」

慌てて携帯を出そうとしたが、彼に遮られた。

「えっと……。
じゃあ、カフェラテで」

あまり頑なに断るのも悪い気がして、携帯を引っ込める。

「了解。
カフェラテをふたつとショートケーキをお願いできるかな?」

スマートに注文し、神月さんは携帯で支払いを済ませた。

できあがった商品のトレイを私が掴むより早く、ひょいっと神月さんが持ち上げる。

「あの、窓辺の席にしようか」

すたすたと歩いていく彼を追う。
自分から手前の席に座り、さりげなく私に奥を勧めてくれた。

込むお昼時じゃないから人はまばらとはいえ、やはり視線が集中する。
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