鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「うん、食べたい。
食べさせて、くれる?」

きゅるんと目をうるわせ、可愛らしく小首を傾げて彼はお願いしてくるが。

「えっ、え、ぇ……」

私はプシューッと煙を吹き出し、フリーズしてしまった……。

「石野さん!」

遠くから国元さんの声が聞こえ、意識が戻ってくる。
声のした方向では彼女が手招いていた。

「ちょ、ちょっと、すみません」

断って席を立つ。
国元さんの元へ駆け寄ったら、すぐに顔を寄せてきた。

「袴田課長に訊いたんだけど、今日、神月さんが来るなんて話は聞いてない、って」

「そう、ですか……」

アポもナシになんで、入れてもらえたんだろう。
まさか、トップモデルだから顔パス……とかはさすがにないか。

「マネージャーの小須田(こすだ)さんに連絡取ってもらったけど、今日はオフだからなにをしているか把握してない……らしい」

所属のモデルを野放しにしないで!
とかも一瞬、考えたが、オフならば仕方ないか……。

「……で。
あれ、どうしたらいいんでしょうか……?」

私の視線の先ではのんきに、神月さんがカフェラテを飲んでいた。
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