鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
しかも目があって、ひらひらと手まで振ってくる。

「袴田課長は好きにさせとけば?
とか言っていたけど、そういうわけにはいかないものね……」

はぁーっ、と国元さんの口から落ちるため息は疲労の色が濃い。
あれからたった時間を考えるに、袴田課長から情報を引き出すのにもかなり苦労したのだろう。
しかもそれが、なんの役にも立たないとなれば、疲れもする。

「……お帰りいただこう」

ぽん、と彼女の両手が私の肩を叩く。

「でも、どうやって……?」

このほんの僅かな時間でわかった。
あの人は人の話を全く聞かない。
しかもは袴田課長とは違った意味で気ままな自由人だ、たぶん。

「それは……」

「ねえ、苺チョコちゃん」

「ひゃぁっ!」

国元さんとふたり、深刻に顔をつきあわせて話していた間に突然、神月さんの顔が出現し、思わずふたりとも飛び退いていた。

「もっと苺チョコちゃんとゆっくりお話ししたいところなんだけど、僕もう、時間がないんだよね」

「……そう、なんですか」

神月さんは残念そうだが、国元さんと共にその言葉で安心した。
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