鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
『え、なに?
転んだの?
それでしかも、眼鏡を壊した、って?
なにそれ、サイコー!』
電話の向こうで上司はゲラゲラと笑っていて、ムッとした。
いい上司ではあるんだけど、ときどきこうやって無神経なことをいうのが玉に瑕だ。
『いいよ、いいよ。
先にそれがなくてもできること、進めておくからさ。
昼メシもまだなんだろ?
ゆっくり食ってきたらいい。
あ、でも、眼鏡ないとメニューが見えないか!』
せっかく、上司優しい! とか思っていたのに、自分からぶち壊してくる。
そういう人なのだから仕方ないけど。
「じゃあ、よろしくお願いします」
まだ笑い続けている上司を無視して電話を切った。
眼鏡ができるまで三十分はある。
そのあいだ、時間を潰さなきゃだけど。
「電話、終わったの?」
「ひゃっ!」
突然、頭上から声が降ってきて悲鳴が漏れる。
「じゃあ、行こうか」
「ど、どこへ……?」
私を眼鏡店へ連れてきてくれた彼が、手を掴む。
「その顎、手当しなきゃだろ。
派手に擦り剥けてるよ」
私の手を掴んだまま彼はどんどん歩いていく。
転んだの?
それでしかも、眼鏡を壊した、って?
なにそれ、サイコー!』
電話の向こうで上司はゲラゲラと笑っていて、ムッとした。
いい上司ではあるんだけど、ときどきこうやって無神経なことをいうのが玉に瑕だ。
『いいよ、いいよ。
先にそれがなくてもできること、進めておくからさ。
昼メシもまだなんだろ?
ゆっくり食ってきたらいい。
あ、でも、眼鏡ないとメニューが見えないか!』
せっかく、上司優しい! とか思っていたのに、自分からぶち壊してくる。
そういう人なのだから仕方ないけど。
「じゃあ、よろしくお願いします」
まだ笑い続けている上司を無視して電話を切った。
眼鏡ができるまで三十分はある。
そのあいだ、時間を潰さなきゃだけど。
「電話、終わったの?」
「ひゃっ!」
突然、頭上から声が降ってきて悲鳴が漏れる。
「じゃあ、行こうか」
「ど、どこへ……?」
私を眼鏡店へ連れてきてくれた彼が、手を掴む。
「その顎、手当しなきゃだろ。
派手に擦り剥けてるよ」
私の手を掴んだまま彼はどんどん歩いていく。