鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
そこまで考えて、はたと気づいた。
きっと、スルーしていたところで袴田課長は明日、ここへ来る。
あの人はそういう人なのだから。
でも、私が神月さんの家へ行けば、会わずに済むのでは?

「……袴田課長か、神月さんか……」

目の前に突きつけられた二択は、どっちも選びがたいものだった。

「うーん。
……うーん」

唸ったところでいい考えなんて浮かんでくるはずがない。
第三の選択肢として万が一に備え、朝早くから袴田課長が諦めてくれるであろう遅い時間までどこかへ待避するというのも思い浮かんだが、私の行動範囲は袴田課長に把握されているのだ。
容易に見つけられてしまう。

「うー、うー」

携帯を掴んだまま、狭い部屋の中をぐるぐると回る。
いい加減、目の回ってきた私の判断力は鈍っていたと思う。

「……神月さんの方がまし」

そうジャッジを下し、彼にマンションの場所をメッセで送る。

【最初からそうしておけばよかったんだよ】

【じゃあ明日、迎えにいくからね】

【おやすみ、苺チョコちゃん】

返ってきたメッセを見ながら、早まったと思わなくもない。

……でも。

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