鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「……袴田課長に抱かれるのは、嫌、だから」

ぽつりと落ちていった言葉は、私の本音だったんだろうか。



翌朝、準備をしたものの、これでよかったのかわからない。
ファストショップで買った、ジーンズにオーバーサイズのパーカーなど。
けれどそもそも私はまともに、誰とも付き合ったことがないのだ。
ハジメテの相手は袴田課長だったけれど、あの人は私の彼氏であったことなど一瞬もない。

――ピンポーン。

「はい」

言われた時間にチャイムが鳴り、玄関へと向かう。

「おはよう、苺チョコちゃん」

「えっ!?」

ドアを開けた途端、視界が薔薇に遮られる。

「あ、あの……?」

「ん?
可愛いだろ?
苺チョコちゃんみたいで」

「はぁ……」

跪いて差しだされるそれ――薔薇の大きな花束を、困惑気味に受け取った。
薄茶色と薄ピンクの薔薇だけで構成された花束は確かに可愛らしいが、私らしくはないと思う。
そしてこれは何本あるんだろう?
ずっしりと重いんですが……。

「えっと。
いったん、これを置いてもいいでしょうか」

「ああ、そうだな。
持っていく必要はないしな」

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