鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
そこに、彼の顔は見えないけれど、深く後悔しているのだけは声でわかった。

「あなたが悪い、わけではないので。
私の方こそ、……ごめんなさい」

これで私に詫びてくれたのは彼で二人目だ。
一人目はいまの上司。
だから変わっていて付き合うのが大変でも、あの人の下で働いているというのもある。

「うん?
知らなかったとはいえ君の地雷を踏んじゃった僕が悪いんだし、気にしなくていいよ。
……でもね、その傷はやっぱり、ちゃんと治療した方がいいと思うんだ。
残るとか残らないとかおいておいて」

彼が真摯に、私を心配してくれているのだと理解した。
それにさっき、あやまってくれたのが嬉しい。
だから素直に、彼に従うことにした。

「ほら、行こう」

軽く手を引っ張る彼に連れられて病院へ入る。
改めて確認した傷は確かに、そのまま放置はかなりマズそうだった。

「ごめん、眼鏡屋さんまで君を連れて帰ってあげたいけど、もう時間がないんだ。
ここの事務員さんに頼んでおいたから、彼女に連れていってもらって?」

治療を受ける私の上方から彼の声が降ってくる。
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