鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
なのにいまは、こんなにすっきりしている。

「いいよ、いいよ。
僕も昨日は遅かったから、少し眠かったしね」

先に起き上がった神月さんは軽く手を引っ張り、私も起こしてくれた。

「髪、ぐちゃぐちゃだね」

「えっ、あ」

慌てて手ぐしで直そうとしたら、神月さんに止められた。

「ちょっと待ってて。
……エリザベスー」

「……はい、旦那様」

彼が部屋の外へ声をかけてまもなく、返事があった。
同時にノックの音がし、エリザベスさんが入ってくる。

「苺チョコちゃんを可愛くしてあげてくれるかな?」

「はい、かしこまりました。
……では、こちらへ」

「えっ!?」

「いってらっしゃーい」

エリザベスさんに移動を促されて戸惑っていたら、神月さんから背中を押された。
仕方なく、彼女へ着いていく。
洗面所らしきところで椅子を勧められ、座った。

「えっと……」

「おまかせください」

「……はい」

にこりとも笑わず、胸に手を当てて小さく頷かれ、もうなにか言うのは諦めた。
それに、文句を言うのならば相手は彼女じゃなくて神月さんだと思うし。

エリザベスさんは黙々と私の髪を結っていく。

< 84 / 105 >

この作品をシェア

pagetop