鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
……肌、綺麗。
お化粧、してるのかな……?

そう疑うほど、彼女の肌はすべすべで、毛穴など存在しないかのようだ。
長いであろう髪をお団子にしてショニヨンキャップをかぶり、正統派メイド服を着る彼女は、神月さんには負けるがそれでもモデルのように見えた。

「……」

鏡越しに彼女を見つめるが、表情は変わらない。
私の傷痕を見ても、だ。
普通だと驚き、気の毒そうな顔をするのに。
なにも反応しないのは新鮮で、気持ちよかった。

「エリザベス、苺チョコちゃんはどうなったかな?」

ひょこっ、と顔を出した神月さんが鏡に映る。

「はい、いかがでしょうか」

「うん、うん。
いいんじゃないかな」

重い前髪は編み込みされて取り払われた。
とはいえ、右から左へと流して絶妙に火傷の痕を隠している。
さらに少しばかり私の白すぎる肌へ色がのせられ、血色もよく見える。

「僕はもういっそ、この可愛い傷を見せてしまってもいいんじゃないかと思うけど、急には勇気がいるからね。
当分はこれでいいんじゃないかな」

視界さえも遮っていた前髪がないだけで、目の前が明るく見えた。

……世の中ってこんなに明るかったっけ?
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