鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
いやいや、それ、私の手札と揃っているんですが?

「次はセバスチャンね」

さりげなく神月さんの手が、自分の持っているカードとペアにならない私のカードをわかりやすい位置へ配置する。
しかもそれをセバスチャンさんは律儀に抜いた。

「はい、苺チョコちゃんの番」

一巡してなんとなく気づいた。
これは私を是が非でも勝たせる遊びなのだ。
そんなことをして楽しいのか?
私にはさっぱりわからない。

少し迷いながらも自分のカードとペアになるカード引き、捨てる。

「次は僕ー」

嬉々としてセバスチャンさんのカードを引く神月さんを見ながら、さらに気づいた。
この順番だと私はあのジョーカーを永遠引けないので神月さんの手に残り続け、彼の負けになるのでは?

「ええーっ」

「どうかしたのかい、苺チョコちゃん?」

つい、口から不満が出てしまい、神月さんが私の顔をのぞき込む。

「え、えーっと……。
なんでもない、です」

だって、セバスチャンさんが私にだけわかるように、しっ、って一瞬、人差し指を唇に当てたから。
これはここでは、わかっていても言ってはいけないことらしい。

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