鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「んー、……ないな」

「……は?」

斜め上を見て少しだけ考えた彼は、これで納得だとばかりに大きく頷いた。

「僕が苺チョコちゃん以外の人間を愛するなんてあるわけがない。
この、PiPhonXをかけてもいい」

「はぁ……」

神月さんはドヤ顔だけど、微妙だな……。
いくら日本で一番人気のメーカーの携帯でも、三世代前のをかけられてもさ……。
いや、神月さんなら最新機種とか使っていそうなのになんで、三世代前の機種とか使っているんだろう?

「だから、心配せずに引っ越してくるといいよ」

「えっと……」

にっこりと、ノーと言わせない笑顔で神月さんが笑う。
結局、そうなるんだ。
これはもう、諦めるしかないのかな……。

帰りも、神月さんが……正確にはゴルゴさんの運転で送ってくれた。

「ひとつ確認するが。
苺チョコちゃんは今朝、ちゃんと電気を消したのかな」

「え?」

神月さんから指摘され、マンション前に停まった車から自分の部屋を見上げる。
そこには明かりがついていた。

「あっ、えと、はい!
消し忘れたんだと思います!」

慌ててシートベルトを外そうとしたが、止められた。

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